食洗機の導入を考えたとき、多くの方が一つの課題に直面します。それは、給水ホースをつなぐための分岐水栓の取り付けです。業者に依頼すると数万円の費用がかかることもあり、どうにかして費用を抑えたいと考えるのは自然なことでしょう。この記事では、食洗機の分岐水栓を自分で設置したいと考えている方に向けて、具体的な手順や注意点を分かりやすく解説します。
- 分岐水栓を自分で取り付けるための具体的な手順
- 自宅の水栓に適合する製品の選び方と必要な工具
- 作業中に起こりがちな失敗を防ぐためのコツ
- 業者に依頼した場合との費用やメリット・デメリットの比較
食洗機の分岐水栓を自分で取り付ける準備
- まずは自宅の水栓の品番を確認しよう
- 適合する分岐水栓の選び方と購入方法
- 取り付けに必要な工具と準備するもの
- 自分でやるメリットとデメリットを比較
- 賃貸物件で取り付ける場合の注意点
まずは自宅の水栓の品番を確認しよう
分岐水栓の取り付けを自分で行う上で、最初の、そして最も大切なステップが、現在ご自宅で使用している水栓の品番を正確に確認することです。なぜなら、水栓のメーカーやモデルによって適合する分岐水栓が全く異なるため、この品番が分からなければ正しい製品を選ぶことができないからです。
品番は、通常、水栓本体の根元付近やレバーの下、あるいは裏側といった目立たない場所にシールで貼り付けられています。例えば、TOTOやLIXIL(INAX)、KVKといった主要メーカーの製品であれば、多くの場合「TKS05301J」や「SF-WM420SYX」のようなアルファベットと数字が組み合わさった形式で記載されています。もしシールが剥がれていたり、印字が薄くて読み取れなかったりする場合は、水栓全体の写真を撮ってメーカーのサポートセンターに問い合わせるか、公式サイトの製品情報と見比べて特定する方法もあります。
この品番確認を怠ると、せっかく購入した分岐水栓が取り付けられないという事態になりかねません。そのため、他の作業を始める前に、必ずこの品番をメモなどに控えておきましょう。
適合する分岐水栓の選び方と購入方法
水栓の品番が判明したら、次はその品番に適合する分岐水栓を探します。最も確実な方法は、パナソニックの公式ウェブサイトにある「分岐水栓サポート」のページを利用することです。こちらでは、お使いの水栓メーカーと品番を入力するだけで、適合する分岐水栓の型番を簡単に検索できます。
適合する分岐水栓の型番が分かったら、実際に製品を購入します。購入先としては、主にホームセンターや家電量販店、インターネット通販サイトが挙げられます。
ホームセンターでは、実際に商品を手に取って確認できるメリットがありますが、店舗によっては在庫がない場合や取り寄せになることも考えられます。一方、インターネット通販サイトは品揃えが豊富で、価格を比較しながら購入できる利点があります。ただし、品番を間違えて注文しないように細心の注意を払う必要があります。
いずれの購入方法を選択するにしても、必ず適合する型番の製品であることを再確認してから購入手続きに進むことが、失敗を避けるための鍵となります。
取り付けに必要な工具と準備するもの
分岐水栓の取り付け作業をスムーズに進めるためには、事前の工具準備が不可欠です。特殊な工具はほとんど必要ありませんが、ご家庭にないものがあれば、作業を始める前にホームセンターなどで揃えておきましょう。
最低限必要な工具
- モンキーレンチ:水栓のナットを締めたり緩めたりする際に必須の工具です。250mm程度の大きさのものがあれば、ほとんどの作業に対応できます。
- プラスドライバーとマイナスドライバー:水栓のレバーハンドルを取り外す際に使用します。
- 雑巾やタオル:作業中にこぼれた水を拭き取ったり、水栓本体に傷がつかないよう保護したりするために数枚あると便利です。
- 洗面器やバケツ:シンク下で作業する際に、配管に残った水を受けるために使います。
あると便利なもの
- モーターレンチ:モンキーレンチよりも口の開きが大きく、大きなナットにも対応しやすい工具です。
- ウォーターポンププライヤー:固着してしまった部品を掴んで回す際に役立ちます。
- シールテープ:ネジ部分からの水漏れを防ぐために使用するテープです。通常は分岐水栓に付属していますが、予備があると安心です。
これらの工具を事前に準備しておくことで、作業途中で慌てることなく、落ち着いて取り付けを進めることができます。
| 工具の種類 | 主な用途 | 必須度 |
|---|---|---|
| モンキーレンチ | ナットの締め・緩め | ★★★ |
| ドライバーセット | ハンドルの取り外し | ★★★ |
| 雑巾・タオル | 水拭き・本体保護 | ★★★ |
| 洗面器・バケツ | 水受け | ★★☆ |
| モーターレンチ | 大きなナットへの対応 | ★☆☆ |
| シールテープ | 水漏れ防止 | ★☆☆ |
自分でやるメリットとデメリットを比較
食洗機の分岐水栓取り付けを自分で行うか、専門業者に依頼するかを判断するために、それぞれのメリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
自分で取り付ける最大のメリットは、何と言っても費用を大幅に節約できる点です。業者に依頼すると、部品代に加えて1万円から2万円程度の工賃が発生しますが、自分で行えば分岐水栓本体と必要な工具の購入費用だけで済みます。また、自分の手で作業をやり遂げたという達成感や、水回りの仕組みに関する知識が身につくことも魅力の一つと言えるでしょう。
一方で、デメリットも存在します。最も懸念されるのは、作業の失敗による水漏れのリスクです。ナットの締め付けが甘かったり、パッキンの取り付けを間違えたりすると、階下への漏水といった大きなトラブルに発展する可能性もゼロではありません。また、工具の準備や作業手順の確認に手間と時間がかかる点も考慮する必要があります。万が一、作業中に水栓や配管を破損させてしまった場合、修理費用が余計にかかってしまうことも考えられます。
これらのメリットとデメリットを総合的に比較し、ご自身のスキルや作業にかけられる時間、そしてリスクを許容できる範囲を考慮した上で、どちらの方法を選択するかを決定しましょう。
賃貸物件で取り付ける場合の注意点
賃貸マンションやアパートにお住まいの場合、分岐水栓を取り付ける前に必ず確認すべき事項があります。それは、管理会社や大家さんに設置の許可を得ることです。
賃貸物件には「原状回復義務」があり、退去時には入居した時と同じ状態に戻さなければなりません。分岐水栓の取り付けは、既存の設備に手を加える行為にあたるため、無断で行うと契約違反と見なされる可能性があります。事前に連絡し、「退去時には必ず取り外して元の状態に戻す」ことを伝えた上で、許可を得ておくと安心です。
また、作業に失敗して水漏れなどを起こしてしまった場合、建物の損害に対する賠償責任を問われることもあります。そのため、作業は慎重に行うことが求められます。
無用なトラブルを避けるためにも、賃貸物件での作業前には必ず管理会社や大家さんへの連絡を徹底してください。許可が得られれば、退去時のことも考えて、取り外した元の部品は紛失しないよう大切に保管しておきましょう。
食洗機の分岐水栓を自分で取り付ける手順
- 作業前に必ず止水栓を閉めること
- 分岐水栓の取り付け手順を4ステップ解説
- 作業時間の目安はどれくらいかかる?
- 水漏れなど失敗しないためのコツ
- 業者に依頼した場合の費用相場と比較
作業前に必ず止水栓を閉めること
いよいよ取り付け作業に入りますが、工具を手にする前に、絶対に忘れてはならない最も重要な工程があります。それは、キッチンのシンク下にある「止水栓」を確実に閉めることです。
止水栓は、キッチン水栓への水の供給をコントロールしているバルブです。これを閉めずに作業を始めると、水栓を分解した瞬間に水が勢いよく噴き出し、キッチンが水浸しになる大惨事を引き起こしてしまいます。
止水栓は、通常シンク下の収納スペースの奥に、お湯と水の配管にそれぞれ一つずつ設置されています。ハンドル式のものと、マイナスドライバーで回すタイプのものがあります。どちらのタイプも、時計回りに回らなくなるまでしっかりと閉めてください。閉め終わったら、一度キッチンの水栓レバーを上げてみて、水が完全に出ないことを必ず確認しましょう。この確認作業が、安全な作業の第一歩となります。
分岐水栓の取り付け手順を4ステップ解説
止水栓を閉め、水が出ないことを確認したら、いよいよ分岐水栓の取り付け作業を開始します。ここでは、一般的なシングルレバー混合水栓を例に、4つのステップに分けて手順を解説します。
ステップ1:水栓のレバーハンドルとカバーを取り外す
まず、水栓のレバーハンドルを取り外します。ハンドルの前面や後部にあるキャップをマイナスドライバーなどでこじ開けると、中にネジが見えます。このネジをプラスドライバーで緩めると、ハンドルを上に引き抜くことができます。次に、本体を覆っているカバー(カートリッジ押さえ)を、モンキーレンチなどを使って反時計回りに回して取り外します。この時、本体に傷がつかないよう、雑巾などを挟んで作業すると良いでしょう。
ステップ2:カートリッジを取り出し、分岐水栓を取り付ける
カバーを外すと、バルブカートリッジという部品が見えます。これを手で真上に引き抜きます。すると、水栓本体に分岐水栓を取り付けるためのスペースが現れます。ここに、購入した分岐水栓を、説明書の指示に従って正しい向きでセットします。パッキンの向きなどを間違えないよう、慎重に作業を進めてください。
ステップ3:カートリッジを戻し、カバーを締め直す
分岐水栓をセットしたら、先ほど取り外したバルブカートリッジを元の位置に戻します。カートリッジには向きが決まっているものが多いので、本体の溝などに合わせてしっかりと差し込みます。その後、カバーを時計回りに回して締め付けます。この時、締め付けが緩いと水漏れの原因になりますが、逆に締めすぎるとパッキンを傷めてしまうので、適度な力で確実に締め込むことが大切です。
ステップ4:ハンドルを戻し、止水栓を開けて水漏れを確認
最後に、レバーハンドルを元に戻し、ネジで固定します。これで取り付け作業は完了です。シンク下の止水栓を、今度は反時計回りにゆっくりと開けていきます。そして、分岐水栓の接続部分や水栓本体の根元などから水が漏れてきていないか、念入りに確認してください。タオルなどで各部を触ってみて、濡れていないかチェックすると確実です。問題がなければ、全ての作業は終了です。
作業時間の目安はどれくらいかかる?
分岐水栓の取り付けにかかる時間は、個人の技量や水栓の状況によって大きく異なります。
DIYに慣れている方や、同様の作業経験がある方であれば、準備から後片付けまで含めても30分から1時間程度で完了することが多いようです。一方で、工具の扱いに不慣れな初心者の方や、説明書をじっくり読みながら慎重に作業を進めたいという場合は、1時間半から2時間、あるいはそれ以上かかることも想定しておくと良いでしょう。
特に、長年使用している水栓の場合、部品が固着していて取り外しに時間がかかることがあります。焦って作業すると失敗や破損の原因になりますので、時間に十分な余裕を持って取り組むことをお勧めします。休日など、まとまった時間が取れる日に作業計画を立てるのが賢明です。
水漏れなど失敗しないためのコツ
自分で分岐水栓を取り付ける際に、最も避けたいトラブルが水漏れです。ここでは、水漏れを防ぎ、作業を成功させるためのいくつかのコツを紹介します。
一つ目のコツは、パッキンの扱いです。分岐水栓には複数のパッキンが付属していますが、それぞれ取り付ける場所や向きが決められています。説明書をよく確認し、指定された場所に正しい向きでセットすることが非常に大切です。古いパッキンは劣化している可能性があるので、必ず新しいものに交換しましょう。
二つ目のコツは、ナットの締め付け具合です。前述の通り、締め付けが緩すぎれば当然水漏れの原因となりますが、力を入れすぎて締めすぎても、パッキンが変形したり破損したりして、かえって水漏れを引き起こすことがあります。最初は手で回せるところまで締め、最後に工具で軽く「クッ」と増し締めするくらいの力加減が理想的です。
三つ目は、作業後の確認を徹底することです。止水栓を開けた直後だけでなく、数時間後、あるいは翌日にも、もう一度接続部分に異常がないか確認する習慣をつけると、万が一の微量な水漏れにも早期に気づくことができます。
業者に依頼した場合の費用相場と比較
自分での作業に不安がある場合や、時間をかけたくない場合は、専門業者に依頼するのも一つの有効な選択肢です。
業者に分岐水栓の取り付けを依頼した場合の費用相場は、一般的に1万円から2万円程度(出張費・工事費込み)と言われています。これに、分岐水栓本体の価格(1万円~1万5千円程度)が加わります。つまり、総額では2万円から3万5千円程度が目安となります。
一方、自分で取り付ける場合の費用は、分岐水栓本体の価格と、もし持っていなければ工具代(数千円程度)のみです。したがって、1万円から2万円程度の費用を節約できる計算になります。
ただし、業者に依頼するメリットは、単に作業を代行してくれるだけではありません。プロの技術による確実で安全な施工が保証され、万が一のトラブル時にも迅速に対応してもらえるという安心感があります。この安心感と手間や時間を考慮すると、業者に支払う費用は一概に高いとは言えないかもしれません。費用、時間、安心感という3つの要素を天秤にかけ、自分にとって最適な方法を選択することが重要です。
食洗機の分岐水栓を自分で取り付けてみよう
- 分岐水栓のDIYは費用を節約できる
- 最初のステップは自宅の水栓品番の確認
- 品番は水栓本体の根元や裏側のシールに記載されている
- 適合する分岐水栓はパナソニックの公式サイトで検索可能
- 購入はホームセンターやネット通販が便利
- 必須工具はモンキーレンチとドライバー
- 賃貸物件では事前に大家さんや管理会社の許可が必要
- 作業前には必ずシンク下の止水栓を閉める
- 止水栓を閉めた後は水が出ないことをレバーで確認
- 手順はハンドル取り外し、分岐水栓セット、元に戻す流れ
- 作業時間は初心者の場合1時間半から2時間が目安
- 水漏れを防ぐにはパッキンの向きと締め付けトルクが鍵
- 作業後も数時間は水漏れがないか定期的にチェック
- 業者依頼の費用相場は工賃だけで1万円から2万円程度
- 自分に合った方法を選択することが最も大切